美術運動144  定価:700円

美術運動 No.149
2022年3月1日発行
定価:700円

 

最新の記事

「芸術運動」としての民藝、あるいは『民藝の100年』展の行間を読む

山本浩貴(やまもとひろき)文化研究者・アーティスト

 民藝運動の全像を把握し直す試みとして、大規模な展覧会である柳宗悦没後60 年記念展「民藝の100 年」が東京国立近代美術館にて開催されている(会期は2021 年10 月26 日(火)から2022 年2 月13 日(日)まで)。その運動の主たる推進者として知られる宗教哲学者で思想家の柳宗悦 -「民衆的工藝」の略語である「民藝」という新たな美の概念は、柳と彼の盟友である陶芸家の濱田庄司、河井寛次郎らによって提唱された ー は1889 年に東京で生まれ、1961 年にこの世を去った。ゆえに開催年である2021 年はちょうどその没後60 年にあたり、同展には「柳宗悦没後60年記念展」という冠が付されている。

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「少女像」について思うこと

浦川登久恵(うらかわとくえ)朝鮮近代文学

 『美術運動』No.148 に2019 年のあいちトリエンナーレ「表現の不自由展」をめぐる特集が組まれていた。ここではそこで展示された慰安婦を象徴しているという「少女像」について少し考えてみたい。私は「少女像」をいたずらにこうした場から排除しようという勢力に与するものではないが、「少女像」の扱われ方や、慰安婦問題に対する韓国政府の姿勢や運動の進め方にはかなり違和感を覚えている。

 

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歴史に埋もれた在日朝鮮人美術家たちの歩みを掘り起こす

武居利史(たけいとしふみ) 美術評論家

白凛『在日朝鮮人美術史1945-1962  美術家たちの表現活動の記録』(明石書店、2021年)

 

―白凛『在日朝鮮人美術史1945-1962  美術家たちの表現活動の記録』(明石書店、2021年)を読む

 

 かつての日本アンデパンダン展に、在日朝鮮人の作家たちが少なからず出品していたことは、私も知っていた。しかし、そうした作家たちがどういう経緯で出品するようになり、その後どうなったのかについて、あまりよくは理解していなかった。1950 年代の美術運動に関する資料を読んでいると、呉炳学、朴史林といった画家たちの名前が出てくる。そうした在日朝鮮人作家の中で、今日最もよく知られているのは曺良奎であろう。独特のマチエールで倉庫やマンホールを描いた絵画は、美術館でもときどき展示される。だが、曺良奎については 1960 年に北朝鮮に渡って以降の消息はよくわかっていない。こうした作家たちは、日本社会と在日朝鮮人コミュニティの間に横たわる溝、朝鮮半島をめぐる複雑な政治状況を反映して、日本の国公立美術館などで検証される機会はほとんどなかった。

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