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宮本秀信 画集 -自然と人間の交歓を描く―

新美 猛

宮本秀信さんがすばらしい画集を出された。すばらしいと言ったのはその作品がすばらしいのは無論だが、画集が一つの作品となっていることだ。画集づくりのプロの力もかりながら、作家が画集制作に思いをこめて、自分の作品と制作、今までの全過程をきめ細やかに語って、画集を見るだけでなく、読んでもらいたいという構成になっていて作家の軌跡がよくわかる画集だ。

 画集発行を記念して大学卒業後の若い頃から現在までの約50年に近い作品を自選して個展が開催された(2017.目黒区美術館・区民ギャラリー)。 宮本さんは私より少し下で武蔵野美術大学で学んだ。森芳雄・麻生三郎さんにかわいがられたようだ(期待されたという意味)。それに応えるようないい仕事をされたナァ~と思う。

 今回の個展の中で大学を卒業してからの数年の作品は初めて見せてもらったけれど、宮本さんの原点はピカソの青の時代にたとえてもいいような青を主体にして青春のいぶきを感じさせる澄んだ色調が特徴だ。その中にも赤い色が少しにじんで顔を出しているような作品がある。その後赤・緑・青・黄といった原色を使った大胆なものに移行して現在に至っている。

 宮本さんは一見もの静かで、おとなしそうにみえるが、とても情熱的な方で、熱中と集中を繰り返す芸術家なんだと個展と画集を通して再認識した次第である。宮本さんは現在「新作家展」と「日本アンデパンダン展」に出品を続けておられる。彼はまだまだいい仕事をされるだろう。

 

宮本秀信画集 求龍堂  定価(3000円+税)