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原子力サブカルチャー7

村田訓吉 むらたくによし(日本美術会会員)

 時代は凄まじい勢いで流れています。サブカルチャーがサブカルチャーでなく、ゲームやアニメは今やメインカルチャー。コンセプチュアルも凄まじい勢いで変化してきています。原子力サブカルチャーと名付けて連載を始め、最初に取り上げたゴジラの世界観と概念は、広島・長崎に原爆を落とされ敗戦の痛手の中、ビキニ湾環礁の水爆実験で生まれたゴジラという設定。反戦・反核、そしてそれに続く脱原子力の道へのはじまりであります。

 アメリカ制作のゴジラでは、ビキニ湾環礁の水爆実験は古代から生き続けているゴジラを撲滅するためにと変えられてしまっています。流石日本に原子力を押し付け核のゴミ溜めにしようとした国ならではのコンセプチュアルであり驚くばかりです。それに類似する日本版のアニメでのゴジラも全く初期のコンセプトとは程遠いものとなってしまっています。これは成長というのか進歩というのか。はっきり言えるのは未来人類が生存するためには、まず原子力と化石燃料の脱却を目指すコンセプトを作り上げるべきです。それが表現者としての責務に逆に感じさせられます。

 時代は移ろい変わりゆくものです。憲法もまた。原爆による敗戦、いやそれ以前にもう、負けていたのは確かだが、その影響を受けた原子力サブカルチャーではないのかと、改憲を時の首相が声高に叫ぶ今、そう感じます。

 シン・ゴジラはテレビでなぜか何度も再放映されます。改憲で9条に自衛隊を書き込むため、アメリカ有っての属国日本には傀儡政権自民党しか無いのだと言わんばかりに、シン・ゴジラには殆どと言って市民側の恐怖や危機的状況は描かれず、そう、事件は会議室で起きている、国の体制や各国との関係が最も大切であると言う流れでストーリーが展開する。そして最後にはメインのキャラクターが、二人で理想の傀儡政権を作りましょうと言う的な話をし終わっていく最悪の映画です。特撮技術や第2形態は可愛かったのがわずかななぐさめであります。

 この時点で、もはやゴジラによって「原子力サブカルチャー」は「憲法サブカルチャー」に変わってしまったのです。 シン・ゴジラはある意味、あの映画のネックは国際軍事危機にアメリカとその傀儡日本政府がどう戦うかという映画だと言っても過言ではありません。そのために改憲が必要であり、9条に自衛隊を書き込む必要があると言っているのです。ただここで自民党改憲草案を読むと、これを改憲と言って良いのかと思うほどに凄まじい草案です。

 

特に自民党改憲草案13条にはこう書かれています。

「すべて国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。」

現在の13条では

「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする。」

 

 懸命な皆さんにはすぐおわかりのことだと思いますが、まず個人が人に変わっています。個人とはどんな人であってもということです。ようするに、個人などの人権は関係ないのです。いわゆる人なのです。ではどんな人かが問題です。

「公益及び公の秩序に反しない限り」と書かれています。現在のものには「公共の福祉に反しない限り」と書かれています。公共の福祉とは私達が受けるものであります。私達自身でもあります。では公益及び公の秩序とは国家や自治体のもつ利益や法令が、憲法よりも大切だと言っているのです。これはこの草案そのものが違憲であり憲法と呼べる代物ではないことを明白にしています。民主憲法は代物、主権者である民衆が、政府とそれに関わる行政立法の暴走を止めるものであり、規制するものが憲法であり、本来それ以外の法令や法制に縛られるものではないのです。憲法はそのコンセプトを全く変えられ、自民党独裁法に変わるのです。このような民主主権を逆行する行為が、いま世界中で行われてきています。私達日本人はまず地球人類として世界中の人々が恐怖も欠乏もないよう、平和なくらしを送られる民主主権の世界平和憲法が完成することを願いましょう。

 

ps 

憲法改憲について最後に一言、書かせてていただきます。

 

 日本国憲法前文にはこれに反する憲法、法令、詔勅を排除すると書かれています。そういう意味では何とたくさんの違憲と思われる法令が出来たのでしょう。

 それは司法が違憲判断を下せないからです。なぜならば最高裁判長とその下の最高裁判官達は内閣が選ぶからです。これを治すには6条の第1条と第2条を変えなければ完全な三権分立は守れないのです。そうです、内閣総理大臣と最高裁判長と最高裁判官は国会や内閣の指名では無く国民の総意、選挙で選べるようにしないと真の三権分立と民主主権は守れません。 護憲に基づいた民主主権の憲法を私達の手で作り上げたいですね。


村田訓吉 むらたくによし(日本美術会会員)

1974年から何度か呼び方は変わりましたが、愛と平和と地球と子ども達の再生可能な未来と言うコンセプチュアルアート製作継続中。NUC IS OVER GO GO GO。