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今、西良三郎氏の公募展作品をまとめてみて

51回アンデパンダン展 「緑の園」
51回アンデパンダン展 「緑の園」

音楽家であり画家であった人。画家としては自由美術家協会、主体美術協会、日本美術会の会員であり、日本美術会附属研究所民美の所長として1996年から99年まで後進の指導にもあたられた西良三郎氏(1917~2003)が亡くなって10年になった。生前、小野章男氏といっしょに3冊の作品集作りの手伝いをして以来、交流を深めさせていただいた。西さん(生前西さんと呼ばせてもらっていたのでこう書きます)のアトリエに伺った時、壁にかかっていたいちごを描いた小品を見たときの感動は忘れられないし、私が主体展に初出品した時(2回しか出品しなかった)、森芳雄に作品を観てもらってあげると走り廻っていただいたことも生涯忘れないだろう。

西さん死後美術関係の資料をあずかり、判る範囲で年表を作ったり、残された写真や主体展のカタログから作品ファイルを作ったりして時々ひとりで眺めていた。それには生前の作品集には載っていない公募展出品の大作が多くあり、これらの大作が西さんの代表作だと思えて、これらをまとめてみたいと思ってきた。しかし、アンデパンダン展出品作の図版は1点もないし、初期の作品は題名さえわからなかった。

40回アンデパンダン展 「夜のとばり」
40回アンデパンダン展 「夜のとばり」

没後10年になるのを機に、日本美術会資料部と主体美術協会事務局に問い合わせてみた。主体展のほうは新しく図版は見つからなかったものの、1965年の1回展から2002年までの主体展出品作品の、各年1点の題名と出品数がわかる資料があった。日本アンデパンダン展出品作は、目録を調べて19回の出品作品のすべての題名がわかったのと、36回展以外の18回分の画像がカラーで残されていた。1968年初出品作の「ビラ入れ」のカラー画像が残されていたのはちょっと感動した。この作品は、「日本アンデパンダン展の25年」にモノクロ図版が掲載されていたが、カラー画像でみるとやはり西さんの色だと思った。青灰色の背景にレモンイエローのコートを着た女性がビラを持っている。背景に見える団地にビラ入れをして出てきたところだろうか。黄色系と青系はその後も西さんの作品によく使われた配色だ。この年西さんは2点の作品を日本アンデパンダン展に出品したが、2点とも奥さんをモデルにしているようだ。

 

自由美術家協会事務局にも問い合わせてみたが、西さんに関する資料はなかった。その結果、1949年に初出品し53年に会員になり64年まで出品を続けた自由美術時代の1949年~52年、57年~64年の12年間の出品作品名が不明のままでそれ以外は各展覧会1点以上の題名がわかったのと、約100点の公募展出品作品のうち54点の図版が手元に集まった。( 約100点というのは、主体展が55点、日本アンデパンダン展が22点で77点。自由美術展は16年間のうち半分を2点出品とすると24点。合計101点ということになる。)

 

はじめは、54点の図版と題名の年表のすべてを美術運動に掲載してもらうことを考えたが、他の記事とのバランスを欠くので断念した。そのかわり、西氏公募展出品作品集の製作を考えるようになった。費用の問題もあるので、16か20ページの小冊子になるだ

ろうが、自由美術時代の題名もなんとか調べて掲載したい。

 

生前の作品集では大作の年代的な流れがつかめなかったので、この作品集は西良三郎の全貌を知る資料になると思う。12~3点以外のほとんどの大作は所在がわからず、現存も危ぶまれる。しかし、作品が残っていないからこそ図版だけでも概観できる資料をつくり、西さんの絵画の正当な評価を問いたい。私は、西さんの作品に強い魅力を感じるし、日本人の油彩画の歴史に1つの位置を占めるだけの質の高さ(構成、メチエ、情感)を持っていると思っている。

 

最後に、「西良三郎作品集」(2002年発行 64ページ)が10部ほど残部あります。定価3000円のところ2000円(送料別)でお分けします。新しい作品集の費用になりますので、よろしくお願いします。


村永 泰 (むらなが やすし)画家、グラフィックデザイナー。

1958年生。油彩、水彩、パステル、木炭等で作品制作。

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コメント: 4
  • #1

    森口みちる (火曜日, 22 4月 2014 22:08)

    3歳~23歳眞dd西良三郎氏と同じ戸山アパートに両親と共に住んでおりました。母が西先生の奥様と親しくさせて頂き、私も可愛がっていただきました。美男美女の素敵なカップルでいらっしゃいました。古典にも何度も伺わせていただきました。奥様がお亡くなりになられたら、後を追うようにご逝去なさり、本当に淋しく思いました。西先生のお作品、ぜひ分けていただきたく存じます。

  • #2

    村永泰 (木曜日, 01 5月 2014 15:59)

    コメントしていただきありがとうございます。
    西氏のお住まいには何度も伺いました。なつかしいです。古い給水塔がそばにありましたね。記事の作品集はもうなくなりましたが、生前につくられた
    16ページの作品集が2種類20部程残部あります。1部1000円です。
    新しい作品集は非売品ですが40ページ1500円で、6月中に完成予定です。西氏ご夫婦のお若いころ(30代か)の写真も入ります。よろしくお願いします。

  • #3

    村永泰 (木曜日, 08 5月 2014 17:46)

    森口様
    西氏の作品を希望される場合は下記に連絡ください。
    moresuta@nifty.com

  • #4

    久野友莉 (木曜日, 14 12月 2017 23:46)

    始めまして、西良三郎先生に、学生時代、音楽を習っていたものです。

    先生の、作品はいくつか拝見しましたが、ゆっくり感想を伝えることのないままとなってしまいました。

    懐かしいです。