百瀬 邦孝(九条美術の会事務局)
4月16日から21日まで行われた「九条美術展」は第3回目を迎え、出品者も増え、展示も充実。憲法九条改悪の前段として96条改定が叫ばれて、集団的自衛権の容認と戦争する国への道を暴走する危険な情勢も反映して、美術家として何ができるか、また、何をすべきかを問いかける展覧会でもありました。
その「九条美術展」の出品者として、自らの創作と平和への思いを語り合う「出品者のつどい」が11月3日(東京・湯島にて)に行われました。パネラーに は、浅野輝一(絵画)、尾関朝子(版画)、加藤義雄(コラージュ絵画)、中里絵魯洲(立体)、武居利史(美術評論)の各氏が立ちました。
浅野氏 は自らの創作の歩みを振り返り、何をどう描くか悩んでいた時、ある人が自分の周りに一本の円を引き、「これが自分の立ち位置であり、この立ち位置で描けば いい」と教えられ悩みが晴れた話を紹介。自分の立ち位置は他の人には変えられない自分自身のエリアであり、そこで創作することの大切さを語りました。尾関
氏はこの機会に自分の作品を振り返って見て、版画と油絵の作品に「自分なりに目指しているものがあったんだ」と自分自身の再発見の実感を話し、とりわけの 社会性をもった創作ではないが、見た人との共感がとても大切であることを感じていると語りました。加藤氏はローコスト(素材と遊ぶ)でダンボール箱や空き
箱、廃棄案内はがき等の素材を活用した創作を紹介。「遊び大好きな自分の愚かさをバネにして環境問題や宇宙空間を平面上で身体的に捕らえたい」と語りまし た。中里氏は社会と美術についてどうあるべきか悩んだ中で、国家の本質が「生命かお金か」というところにあると問いかけ、であるならば「命の気配をどう伝
えるか、その装置としての万華鏡(不戦の鳥兜)」の創作動機を語りました。武居氏は美術としてどう政治に関わるかについて、自らの美術研究の歩みを紹介し つつ創作の中での「解放というイメージ」がキーポイントではないかと指摘しました。
その後会場発言のやり取りもありましたが、全体として自分の 創作の場を通して社会と関わっていくことの重要さが様々な角度から掘り下げられた貴重なつどいとなりました。また、欠席された出品者から寄せられた100 通ものアンケート意見も紹介され、豊かな内容をもちました。(追伸:第4回展・2015年1月11~17日、第5回展・2016年2月15~21日(予 定)いずれも東京都美術館(上野)が開催・内定しています。)
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