「100万人のキャンドルナイト」は、電力消費を抑制して原発に頼らずに済むLOHASな生活スタイルを訴える、世界最大級のイベントです。「キャンドルナイト」とは照明を消し、キャンドル(蝋燭)を灯して過ごそうという、スローライフ運動の一つで、その始まりは、アメリカ・ブッシュ政権の原子力発電所建設を伴うエネルギー政策に反対して、2001年にカナダから発信され、オーストラリア経由で日本にも届いた、夏至の夜に電気を使わずに過ごす、「自主停電」を提案する下記のようなチェーンメールにありました。
「一人一人の暗闇で手をつなごう!自主停電を!2001年6月21日 (木)午後7時から10時まで
ブッシュ大統領は景気をよくするためにどんどん発電所をつくっていくぞ、というエネルギー政策を発表しました。地球温暖化防止のための国際合意である京都議定書を支持しないことも表明しています。そこでは省エネ、自然保護、代替エネルギーなどが軽視されています。
世界最大のエネルギー消費国であり、地球温暖化ガスの排出国である米国のリーダーのこの姿勢に対する抗議の意志を象徴的に表現するために、私たちは「自主的停電」を行うことにしました。誰にでもできる簡単な行動です。来る6月21日、午後7時から10時までの間、電気を消して過ごすのです。地球の自転によって東から西へとこの停電の帯が回っていくことになります。プラグを抜けるものは抜きましょう。ロウソクに火を点し、太陽神に捧げましょう。ゲームをしたり、暗闇の中を散歩したり、お化けの話をしたり、電気を使わずにできることをして楽しんで下さい。
1999年出版の『ナチュラル・キャピタリズム』に書かれているように、効率性の極めて高い省エネのための高度技術はすでに発明され、すでに製品として使用可能な状態にあるのです。これらの製品を使うようになれば、地球温暖化ガスの排出を大幅に削減でき、5年以内に採算がとれるようになるばかりか、その後は出費を大幅に節約できることにもなります。
このメールを広く転送して下さい。環境関係の団体や、政府関係者にも。そして知らせましょう。私たちはもう地球の貴重な資源を搾取し、乱費することをやめたいのだと。私たちが望むのは、地球環境、効率的エネルギー、再生可能な代替エネルギーのための教育、活動への参加、そのための予算です。」(英語版原典より一部意訳) |
2001年4月に開店したばかりの国分寺「Caf e Slow(カフェスロー)」では、この呼びかけに応じて、「地球の自転とともに世界各地で生まれる暗闇のウェーブ」づくりに「暗闇カフェ」として参加しました。続いて2002年6月には「ナマケモノ倶楽部」が日本で初めて「自主停電」を呼びかけました。これは「原発反対を100万回叫ぶより、1人1人が生活のワンシーンで電気をつけずに過ごす時間を体感していくことが、いつか安全で平和な暮らしへとつながる」と考え、みんなで自主停電を行うものです。
そして、「ただ、2時間電気を消すために集まってもいいんじゃない?」という発想から、ロウソクの灯りで過ごすムーブメント「100万人のキャンドルナイト」のプロジェクトが始まり、
2003年6月22日の夏至の日の20時から22時に、第1回が開催されました。
地球温暖化防止のための「Co2削減/ライトダウンキャンペーン」として環境省も相乗り参加して、東京タワーなどの施設において消灯が行われました。文化人類学者 明治学院大学大岩圭之助教授(ペンネームは「辻信一」)らが呼びかけ人代表をつとめ、坂本龍一、オノヨーコなどの音楽家も呼びかけ人となりました。以降、「でんきを消して、スローな夜を。」をキャッチコ
ピーとして、夏至と冬至を挟む期間の夜(日本時間20:00~22:00)に開催され、日本各地でさまざまなイベントが行われました。
2004年には運動が評価され、グッドデザイン賞(新領域デザイン部門)を受賞。参加者は664万人(2005年夏至)、ライトダウン施設は39,845カ所(2006年夏至)、イベント開催場所は
473カ所(2006年夏至)まで広がりました。キャンドルナイトは世界規模で展開され、公式フォトコンテストを行うほどの盛況を見せました。
「TOKYO MiLKY WAY」(トウキョウミルキーウェイ)は、「100万人のキャンドルナイト」の声がけ人代表 辻信一氏と、深瀬鋭一郎氏が雑誌「自然と人間」2006年7月号掲載の鼎談「芸術は地球を救う、か!?」で語り合ったことを契機に2006年夏至から始まった、LOHAS(ロハス)なアート・フェスティバルです。それまで、ほとんど芸術施設の参加はありませんでしたが、深瀬鋭一郎氏がギャラリーや美術館、イベントスペースなどに呼びかけをはじめ、2009年夏至には、関東全域の50芸術施設にて開催されるに至りました。
都会でも美しい自然の光を取り戻すような、豊かなライフスタイルを、芸術やキャンドルナイトを通じて提案するもので、「深夜の無駄なネオンを消せば、東京都心でも銀河(ミルキー
ウェイ)が見える筈だ」というところから、その名がつきました。
キャンドルの明かりの中で、展示やパーティ、コンサート、ダンス、パフォーマンスを楽しみ、銀座や青山、浅草橋で「夜のギャラリーめぐり」ツアーを行い、キャンドルの灯りで作品を鑑賞するなど、スローでアートフルな時間を過ごすフェスティバルとして、アートファンに留まらない幅広い人気を集めました。また、多くのマスメディアにも採り上げられました。
2012年の開催10周年をもって、かつての国民的運動「100万人のキャンドルナイト」は、全国的・組織的な声掛けを終了し、各施設の自主運動に切り替えられたため、「TOKYO MiLKY
WAY」も、その方針に従い、それまでの参加ギャラリーが自主開催する形に切り替えました。
もっとも、美術関係者の間で、「原発事故問題が未解決の中でキャンドルの火を絶やすべきではない」との意見が強かったことや、環境省、大阪、名古屋などが引き続き組織的に開催していることから、元の「トウキョウミルキーウェイ実行委員会」メンバーのうち有志が結集し、実行委員会を再度立ち上げ、2014年夏至から試験的に開催を再開したところです。
芸術・文化が社会と人間に与えるポジティブな影響力を活かし、ライフスタイルを変革して行けば、原子力など化石エネルギーに依存するこの過剰消費社会を、循環的で持続可能な社会に変えていける筈です。アートとキャンドルで過ごす「自主計画停電ナイト」で、あなたも豊かなライフスタイルを共有しませんか。
深瀬鋭一郎 (ふかせえいいちろう)
深瀬鋭一郎 (ふかせえいいちろう)
1963年大阪生まれ。
1998年深瀬記念視覚芸術保存基金を設置し、現代美術
の収蔵・貸出・展示を開始。ピカソ財団、国際交流基金、上
海万博などの依頼で数多くの展覧会・イベントを組成。
2008年モンブラン国際文化賞を受賞。
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村田訓吉 (土曜日, 06 6月 2015 18:09)
FBなどでアップしました。
有難う御座います。
キャンドルナイトには芸術が社会の中でどういう風に関わっていくかを考えるいいきっかけになる展覧会です。